http://www.telegraph.co.uk/news/science/science-news/11343258/ME-fear-of-exercise-exacerbates-chronic-fatigue-syndrome-say-researchers.html
ランセット精神疾患専門誌にロンドンのキングスカレッジ教授Trudie Chalderが発表した論文がME/CFS患者や専門医たちの間で物議をかもし出している。
以下は、上記のテレグラフ紙に載った記事の要約である。
症状を緩和するための最善の方法を見出すために、キングスカレッジ研究者は600人以上の患者に対して1年を通してさまざまな治療プログラムを行いその経過を見た。
認知行動療法、特化した医療ケアと運動などである。その結果、多くの患者は運動に対する恐怖心をもっていたが、行動療法でもっと活動的になるように促すと、彼らの症状が改善することがわかった。
「この結果は、治療家がもっと散歩などの運動を推奨するように示唆している。すぐに自転車に乗れという意味ではないが、ゆっくり注意深く行われるべきである。」と教授は言う。
寝たきり患者は最初はベッドに起き上がったり、数分だけベットから出て座ることを提案している。
ところが、当然のごとく、この論文に対して患者団体や専門家の間で批判の声があがっている。
この論文は、患者が怠けている、または恐れているから運動をしないという印象を与えてしまうことによる。
ME Associationのチャールズ・シェパード医師は、ME患者には個別の治療計画が必要だと言う。
この論文は、「休養が駄目で運動がいい」という短絡すぎる見解を後押ししてしまう可能性があるので危険だと語る。
Action for MEのSonya Chowdhuryは、「この結果が指し示すものは、MEやCFSが心因性の病気だということではない。ME患者は、短い散歩やベッドから起き上がるなどの適度な活動や運動を恐れているわけではない。」と語っている。
Severe ME・25%グループは、この発表に対して「我々は激怒している」という声明を出している。
MEという病気が神経系疾患であることが無視され、精神医学の関与によって矮小化され迫害され続けていることに抗議している。
海外では、CFSが精神疾患だとする医師が患者から脅迫され、24時間のセキュリティで身の安全を守らねばならないという事態も報告されている。
この記事を読んだとき、わたし自身もすぐにこのことが大問題となると思ったが、次の瞬間には次から次へと抗議文が投稿されているのを見て、多くの患者がこの研究結果に対して批判的だということがわかった。
と同時に、個人的には恐怖と自制というのは、同じコインの裏表でもあるように思った。
自分のエネルギー以上の運動や活動をすれば症状が悪化し自分自身が苦しむということを知っている患者にとって、それは「自制」であるが、病気でない人にしてみれば、それはただ単に「恐怖」にしか見えない。
また、「これをすれば、このような結果になる」という多少の恐怖心や警戒心というものが全くなければ、自制などできないとも言える。
どちらにしても、個人差や病気の重篤度にも差があることを考慮する必要がある上、「運動すると悪化することが怖い」という心理状態がたとえ個々人の患者にあったとしても、実際に運動するエネルギーが産出されていないという身体的な障害があるということがうやむやにされてはならないと思う。